先日来院された患者さんの症例をもとに、転倒後の手首痛で見落とされやすいポイントをわかりやすく解説します。
症例:30代女性、転倒後に手首の痛みとしびれが続く
- 主訴:転倒して手をついた後、手首が痛い。
- 経過:受傷後2週間経っても改善せず、整形外科受診 → レントゲン異常なし、湿布と痛み止めのみ処方。
- 当院来院時:受傷から約1ヶ月。手関節の痛み(特に尺側)と、手背および尺骨神経領域にまで及ぶしびれを訴える。触れるだけで痛みやしびれが誘発されるほど感受性が高まっていた。
検査でわかったこと
- 手関節の可動域(ROM)は正常。ただし掌背屈で痛みあり。
- しびれは尺骨神経領域に一致し、手関節より近位にまで及んでいた(手首から7〜8cm近位)。
- レントゲンで三角骨・豆状骨・月状骨・舟状骨・尺骨などの骨折は疑われなかった。
- 特に**ギヨン管(手根管とは別に手首外側にある尺骨神経の通り道)**に圧痛が顕著で、圧迫でしびれが再現されたため、**ギヨン管症候群(外傷性の圧迫神経障害)**と診断しました。
なぜ「ただ湿布・痛み止め」では改善しないのか
レントゲンで骨に異常がなければ安心、というわけではありません。
骨折以外にも、靭帯損傷・腱鞘の炎症・神経の圧迫など“軟部組織”の問題は多く、レントゲンだけでは把握できないことがよくあります。今回のように神経が圧迫されているケースでは、単なる消炎鎮痛だけでは十分な改善が得られないことが多いです。
当院で行ったこと(治療方針の一例)
- 詳細な徒手検査で痛みの起点・しびれの分布を確認。
- ギヨン管部の圧迫を軽減する手技療法と、神経滑走(ニュートラルポジションでの神経の動きを改善する)に重点を置いた施術。
- 必要に応じてアイシング、テーピングや装具で圧迫の除去・安静を促す。
- 日常生活での手の使い方・負担を避ける指導(作業や姿勢の改善)。
- 経過観察と再評価を短期間で行い、改善が見られない場合は画像検査(MRI等)や専門医と連携。
※治療は患者さんの状態に合わせて都度調整します。
大切なポイント — 「細かく見ること」が治療の第一歩
今回の症例から再認識したのは、細かく観察し、あらゆる鑑別を行って病態を特定することの重要性です。
病態が曖昧なままでは治療は手当たり次第になり、結果として症状が改善しないことが少なくありません。柔道整復師として、詳細な問診と徒手検査で原因を突き止めることを大事にしています。
こんなときは早めにご相談を
- 転倒後、手首や手に痛み・しびれが続く
- レントゲンで異常なしと言われても痛みが引かない
- 手の感覚が変(しびれ・冷感・チクチク感)
上記に該当する方は、一度専門的に徒手検査を受けてみることをおすすめします。早めの対応で回復が早くなるケースが多いです。
当院では丁寧な評価と、症状に合わせたオーダーメイドの施術で早期回復を目指します。気になる症状があればお気軽にご相談ください。

